今なお潜む混沌とした株式市場の懸念
香港の金融管理局はここ数日、市場へ香港ドルを売り出しており、これは資金が継続して香港へ大量流入することを反映している。
香港への資金殺到にあたり、筆者はいくつかの可能性に確信を持っている。まず第一に資金の後進市場への鞍替え、第二に人民元の価格急騰、そして第三に米大統領選との関連の可能性である。米国株が最近続けざまに下落する際、同時に香港ドル為替相場および香港株式市場は強気に転じてきた。この現象は、資金が米国株から離れ香港株式市場へ投入されていることをあらわしている。事実上、年内の米国株は好調で、一方の香港株式市場はパフォーマンスはそこそこ止まりとなっている。更なる高リターンを求めて、資金が第4四半期も追って米国株売却から香港株購入の流れをたどる可能性が高い。
このほか、人民元対米ドルの中値はここ最近人民元切上げ以降の高値を絶えず更新しており、この人民元の価値上昇も海外資金流入を引きつけている。人民元の価値上昇にともない、加えて市場では中国経済が第3四半期にすでに底打ちになったものとみなされており、中国株(香港上場)は非常に有力視されている。連日上昇するマーケットにおいて、低価格に留まっていた多くの中国株は安定した上昇幅を記録している。
人民元の切り上げは、米大統領選との関連の可能性があると筆者は認識している。オバマ氏は中国を為替レート操作国に加える可能性があるかどうかのレポート発表を大統領選の後に、引き延ばすとしているが、共和党候補のロムニー氏は自身が当選すればその後ただちに中国を為替レート操作国に加えると宣言していることから、人民元切り上げの問題は米国2政党の票獲得のためのツールと化している。このことから、昨今の米中央政府の急速な人民元高に力を注いでいるのは、政治的判断が働いていると確信するに足る理由がある。言い換えれば、米大統領選挙の終結後、人民元高の勢いは失速する可能性がある。
近いうちに香港に流れ込む資金は、投機的資金である可能性がかなり高く、流入・流出のスピードが非常に速いはずだ。資本市場において、株式市場のトレンドは向こう見ずの如く急速に進み、また早急に後退してしまう可能性がある。テクニカル分析上、ハンセン指数はすでに年初来高値を更新しており、以降もさらなる上値追いとなるであろう。しかし、カオス(混沌)とした株式市場には今なお懸念が潜んでいる。例えば、米国の「財政の崖」問題や、欧州債務返済のピークなど、これらの懸念はいつでも株式市場のトレンドに転換をきたしてしまう可能性があるため、投資家は慎重なリスク管理を行うことを絶対に疎かにしてはならない。このほか、もしロムニー氏が大統領選で勝利を収めた場合、これは誰も予測できない重大な影響を資本市場へもたらすブラック・スワン・イベントとなるであろう。