オリンピックの経済効果は短期的
4年に1度のオリンピックがロンドンで開幕して久しいですが、オリンピックはただ単に4年に1度のスポーツの祭典であるだけでなく、同時に多くの国家が経済振興ツールとして用いる。これはオリンピックが一定の経済効果をもたらすことができるためだ。主催権獲得後、主催国は盛んに土木事業に満身の力をふりしぼり、大量のインフラ建設が進む。オリンピック関連の建設事業は雇用を生みだし、経済全体が恩恵を受ける。資本がオリンピック開催前に集中的に投入されるため、オリンピックが開催国にもたらす経済効果は主に開催直前の時期にピークへと達する。
HSBCによると、第2次世界大戦以降にオリンピックが開催された15都市の研究報告結果から、オリンピック開催前2年間の主催都市の経済成長率(GDP Growth Rate)は、全世界の経済成長率と比較して1.9%高であるものの、開催年の経済成長の増加幅は世界経済と比較してわずか0.2%高に落ち込む。開催翌年ともなれば世界経済と比べて0.1%のマイナスとなってしまうと指摘している。ここから、オリンピックにより発生した経済効果は時間が経つに従って徐々に減退してしまうということだ。日本は進んで2020年のオリンピックの開催権を争うと公表しているが、この目的は経済刺激効果を期待するのも一つである。HSBCのレポートを参考とするなら、もし日本が主催権を獲得した場合、日本経済は一定期間は比較的盛り上がるだろうが、その後は日本経済の景気サイクルの不況からの脱出は一段と困難になるのではないだろうか。
オリンピックは、開催国に短期的な経済効果をもたらすが、時として深刻な経済の後遺症を患う。04年のアテネオリンピックの例では、140億~150億ドルの深刻な支出超過となってしまった結果、巨大な財政赤字は今日のヨーロッパの債務危機の前兆となった。日本は今では債務の重くのしかかる国家で、政府債務の対GDP比は200%を上回っている。欧州PIIGS五カ国のどの国よりもはるかに高い数値である。それゆえ、日本にとってはたとえ主催権を得てもよい事ばかりとは一概に言えず、オリンピックによって、世界のマーケットが日本の債務問題が限度を超えてしまうかもしれないと織り込み始めるのではと著者は危惧する。