債務問題が市場救済財源を食い潰す
しばらくの間ひっそり静まっていた欧州信用不安だが、最近になってまたもや波瀾が巻き起こった。今回の焦点はスペイン・イタリア両国の地方債務問題にある。
スペインのバレンシアに続いて、6つにも上る地方で財政援助を要請するだろうとの報道があり、事実であれば、スペインは最終的に国際社会とEUに全面的な金融支援を求めるはずだ。悪いニュースの影響を受けて、スペインの10年物国債利回りは7.5%を上回り、1千億ユーロの金融援助を得る以前の水準よりも更に上昇した。これは、市場がスペインの先行きに対し悲観的な態度を反映している。スペインはユーロ圏で第4の経済大国であり、その影響力と重要性は決してギリシャと一緒くたにして論じることなどできない。ひとたびスペインがこの難関を切り抜けられないとなれば、世界経済と金融市場の情勢はすぐさま壊滅的ダメージを受けることとなるであろう。スペインの情勢変化に注意すると同時に、投資家の方々にはもう一つの「時限爆弾」のイタリアの存在を見落とさないでいただきたい。
スペインへの前面的支援は、欧州現存の、ひいては将来の市場救済ための財源までも消耗し尽くすかもしれない。そうなれば万一再び国家レベルの問題が起きても、関連各国の援助は得られない。もちろん、欧州各国は金融支援のメカニズムを拡大できるが、そのプロセスは容易ではなく、非常に大きな政治的反発に遭うであろう。ドイツでは、メルケル首相が再び欧州債務問題救済への力を強めないよう、ある政党が連立政権離脱の構えで脅しをかけており、メルケル首相が現在受けている政治圧力は明らかに軽くない。このほか、ドイツ憲法裁判所は9月にも欧州安定メカニズム(EMS)が違憲かどうか判断を下すとしており、もし違憲であると判断された場合、その後の行方は想像し難い。
欧州債務危機がますます激化する中、ユーロ圏に残された最高ランクの格付けを保有する国家は、ドイツとルクセンブルクそしてオランダだけとなった。言い換えれば、欧州債務危機救済負担は主にこの三カ国に委ねられることとなるはずだ。いまの状態が続けば、ドイツ・ルクセンブルク・オランダの国債入札で借り入れコストは欧州債務危機救済の要因で上昇する可能性が非常に高く、ムーディーズがドイツの先行き見通しをネガティブに引き下げたのも無理はない。